「末松クレール論文集」発行によせて

   末松クレール先生は2003年(平成15年)2月22日に逝去された。享年57歳であった。
   1981年(昭和56年)に宇部短期大学専任講師になられて以来22年間、私たちは自然愛好家としての先生、学園民主化を語られる先生、ユーモア溢れる言葉の数々で私たちを覚醒させられた先生など、先生のさまざまな側面に触れる幸運を得た。しかし最も心に残るクレール先生の姿は最後まで一貫して保たれた研究者としての情熱と真摯な姿勢である。
   編集グループでは、クレール先生の研究者としての歩みを辿ることができるように、また貴重な研究成果が日本国内外の研究者によって引き継がれ、発展させられる可能性を信じて、今回、先生の論文を一冊の論文集として残すことにした。
   論文は1974年から2000年までの26年間にはっぴょうされたものを収録した。これらはペロー(Perrault)、ポトキ(Potocki)、ゾラ(Zola)、ロティ(Loti)、クローデル(Claudel)、セガレン(Segalen)、コレット(Colette)、マルロー(Malraux)、ユルスナール(Yourcenar)の作品を対象とする研究論文であり、17‐18世紀の作品も排除されてはいないが、19‐20世紀にかけてのものが多い。中でもセガレンとポトキに関する論文は日本で最初に発表された論文の一つとして注目に値する。
   なお、1968年10月にパリ大学文学・人文学部(ソルボンヌ)に提出された修士論文と、1977年にモンペリエ大学文学部に提出された博士論文は、共に大部であるため収録せず、タイトルを以下に掲載することをご了解いただきたい。

  • Problems of Dramatic Form: A Study of Arnold Wesker's First Seven Plays(1956-1965)
    (修士論文、100ページ)
  • Image et signification de i'Asie dans l'oeuvre d'Andre Malraux (博士論文、386ページ)


   また、同じタイトルの論文が2つの学会誌に掲載されている場合があるが、どれも最初の論をさらに深め、発展させたものとなっている。編集グループは考察の深まりこそ重視すべきであるという観点からその両方を収録した。

2004年2月      
末松クレール論文集編集グループ

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