はーめるんになくふえ
ハーメルンに哭く笛
出版 徳間書店【徳間ノベルス】
発行 1998.5
価格 1000円+税 新書判 409ページ
ISBN4ー19ー850418ー0
昭和10年、悪夢が帝都を襲う。
上野下町界隈から、児童30名が忽然と姿を消した。
翌日、未曾有の激しい雨と雷が帝都を襲った。
台風の翌日、朝焼けの中、天王寺の僧侶、寛永は人気のない寺の裏手の墓地へ向かっていた。ほかの新米僧侶とともに、墓地の草刈りをいいつけられたのだ。汗だくになり、草刈りを続ける寛永の目の前に、お地蔵様の影がよぎった。
こんな墓地の中にお地蔵様があったっけ。不思議に思い進むと、また一体、目を凝らした寛永は、黒っぽい霧と見えたものが、蠅の大群であることに気づいた。これは……子どもの死体だ。
(新書判折り返しより)