うさぎとぱんだは車に乗れる。

だきにのつむぐいと
陀吉尼の紡ぐ糸

出版 徳間書店【徳間ノベルス】
発行 1998.1
価格 905円+税  新書判 356ページ
ISBN4ー19ー850404ー1
 昭和9年、浅草。沼田平助は紀州犬の散歩で、吉原の弁財天にひきずられるように入った。本堂と稲荷祠の間の路地を抜けた。右手には「触れずの銀杏」という神隠しの因縁がまつわる銀杏の古木がある。と、足元にぐったりした老人が座っている。が、どこか変だ。顔がこちらを向いているのに、同時に背中もこちらを向いている。つまり顔が裏表逆さまについているのだ。老人の手がゆらり動き、手招く。蒼白になって、参道を駆け抜けた沼田の背中に甲高い獣の遠吠えが響いた。
(新書判折り返しより)

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